part 2
なぜヒューマングループが、この講座をつくったのか。
長崎県全体の話を受けて、一社の経営者として感じてきた危機感と孤独感を、なるべくそのままお話ししました。
内海 梨恵子(株式会社ヒューマングループ 代表取締役)
経営って、どうやって勉強するの。右腕って、どうやって育てるの。
ヒューマングループは1953年創業、佐世保で自動車学校2校・貸切バス・旅行・保険代理店・カフェを営む、従業員65名の会社です。私は2003年に父の会社に入り、各現場を回りながら三代目として経営を引き継ぎました。
佐世保の青年会議所で同じ立場の後継者や経営者と話していたとき、一生懸命考えている人ほど「このままでいいんだろうか」「どうやって勉強したらいいんだろうか」と悩んでいました。そして自分自身も、「自分の片腕はどうやって育てるのか」という問いに答えを持っていませんでした。
終身雇用が前提で、番頭さんが後継者を支えてくれた二代目の世代と、人が一つの会社にとどまらなくていいという世の中で三代目を迎えた私たちの世代では、置かれた条件が違います。それはいい悪いではなく、経営者にとっては相当しんどいことだと思っています。
頑張らなくても成果が出る仕組みを、デジタルでつくった。
以前のヒューマングループは、属人化と、頑張る人に仕事が集中する会社でした。数字を上げろと管理型で追い込めば利益は出ますが、繁忙期が終わると人が辞める。どうして成果が出たのに辞めるのか、当時の私にはわかりませんでした。
たどり着いたのは、「頑張らなくても、この会社のルールを守っていけば成果が出て、優秀な人材になれる」仕組みをつくること。これはデジタルと非常に相性が良く、やった結果が次の数字です。
12%→3%離職率
7年連続ゼロ新卒の離職
約1.5ヶ月30年使った社内システムからの全社移行(全社展開)
5つの賞この1年で受賞(日本DX大賞・DXセレクション2026 準グランプリ ほか)
賞の話をするのは自慢のためではありません。2025年7月の日本DX大賞で審査員を務めてくださっていたのが志水さんで、そこから1年、「私たちがやってきたことは自分たちの課題解決だけでなく、みんなに共通するお困りごとだ」と話を練り上げるうちに、この企画にたどり着いたからです。
振り返ると、「ない」ものが4つあった。
手本がいない「社長をお手本にしてください」と言っても、あそこまで働きたくない、スタイルが違う、と言われてしまいます。
比べる相手がいない同期が何人もいる会社は、地元の中小企業にはほとんどありません。入社3年目、10年目の自分のキャリアがこれでいいのか、比べようがないのです。
相談できる仲間がいない地元は小さいからこそ、意外と同級生か職場の人としか話しません。経営者は経営者として、幹部人材は幹部人材として、もう一つのコミュニティが大切だと感じています。
学べる場所が地元にないいい講師の話を聞きたいと思ったら、福岡や東京に行かないと会えません。一社で講師をお呼びする財力はありませんが、みんなで集まってお呼びすることならできるのではないか、と考えました。
比べる相手がいないことについては、大学生と話すときの実感も添えました。私は東京の大学に出て、外に出たからこそ長崎・佐世保のいいところも足りないところもわかるようになりました。
以前は会社のスタッフをいい会社の人に会わせたくないと思っていましたが、志水さんに「その人にとって良かったら、それはいいことでしょう」と言われて、考えが変わりました。
給与や条件だけで戦うのではなく、経営者の人間性や仕事のやりがいで「ここで頑張ろう」と思ってもらう。そのためには、他社を見せるしかない。
ネットでもAIでも情報が取れる時代に、見せないということはできません。
ご縁から始まった。
構想はありましたが、構想だけでした。今年4月、日本DX大賞の審査員だった志水さんと小柳さんが佐世保に来てくださり、「やっぱりこういうのが必要だよね、やろうね」と話した後で、経済産業省の「地域の人事部」事業を見つけました。
志水さんにプログラムをつくっていただいて申請し、採択されました。佐世保市役所、THINK NAGASAKI、Funleashとの連携事業として、十八親和銀行と佐世保商工会議所にもご協力をいただき、10月8日に開講します。
10年前に私がこの講座を受けていたら、もっと苦労しなかった。もっとスタッフは残ったかもしれない。そういう講座にしてみました。私の悩みや、今のヒューマングループの幹部人材を受けさせたいと思う講座ができたと、胸を張って言えます。
内海 梨恵子